<こすもす-2000-おわりに(Letztes Werk>















































































古い聖歌集         

ずっと以前に

あんなに愛して

口ずさんだ歌でさえ

もう すっかり忘れてしまいました

こうして 春風に吹かれていると

いつだったか 

木漏れ日に抱かれて

あなたと

囁きを交わした

そんな日の

とりとめのない思い出までも

よみがえって

今日のように

白い光が かすかにゆれている

最後の春の日に

あなたが 遺していった

古い聖歌集を

開いてみるのです

あれから 幾度の春と 

巡り遭ったことでしょう

歌集の片隅の青いたサインも

色褪せてしまって 

読み取ることもできません

あれから 半世紀以上も

経ったのですから

今 時空を越えて

渺渺(びょうびょう)と 忍び寄る気配は

あなたでしょう

あの頃 巡り遭った

あなたでしょう

あの日の風は

あの日の光は

あなたでしょう

今 それがわかるのです

私は ただ あなたに 

共鳴したかったのだと

それ以外に なにも 

ほしくなかったのだと

ただ 天空に伸びる

一筋の弦(いと)に

なりたかったのだと

そうして

あなたの かすかな囁きを

感受し続けていたかったのだと・・・・

                       Dec.2000-you

製作/発信 : アイ・ティ・アイ
編集事務センター